効果ない?PRP皮膚再生療法とは、リスクや失敗例について詳しく解説
2022.02.17
2024.11.22
近年の美容外科の動向として、日本人は大掛かりな整形よりも「簡単で手軽に若返りたい」というプチ整形を好む傾向があります。そういった背景から、クリニック側も手軽なアンチエイジング治療にシフトしていく傾向があります。
中でも自身の細胞を利用した再生治療は注目を集めていますが、実際どうなのでしょうか。水の森美容クリニック 総院長が詳しく解説していきます。
目次
近年広まってきた再生医療
再生治療とは?
美容外科の広告を見ていると再生医療などによる治療の宣伝を多く見かけます。
再生医療とは、元来、人間の細胞や組織には再生する能力が備わっており、この再生能力を利用して、障害を受けた組織や臓器を正常な状態に回復させることにより、病気を治癒へ導こうとする医療です。
最近では、この分野における研究が医学界のトピックスになっております。
PRPとは?
PRPとは自己多血血小板療法と呼ばれるものです。
患者様の腕から採血し、その血液を遠心分離器にかけて多血血小板(PRP)を抽出します。
この多血血小板の中には、新しい組織や細胞の成長を即す栄養素が豊富に含まれています。
PRP治療は整形外科領域(美容整形ではなく骨折などを治す整形外科)では、数年前から頻繁に行われている治療です。
ニューヨークヤンキースの田中将大選手が肘の治療としてPRP治療を行ったことで、この治療法が有名になりました。
関節炎や慢性のアキレス腱炎、テニス肘など慢性的な炎症において、根治とは言えませんが、症状を緩和させることでは、ほぼ確立された治療となっております。
美容外科分野で導入された再生医療(PRP治療)
「シワ・タルミの改善」にPRP治療を容易に用いるべきではない
このPRPを顔に注射することで、組織や細胞の再生を即し、シワやタルミを改善できるのではないかという発想で、美容外科分野でもPRP治療が導入され始めました。
結論から申しますと、当院では現段階において、「シワ、タルミの改善」にPRP治療を容易に用いるべきではない、と考えております。
現状、美容外科分野でのPRP治療は正しい施術技術が確立されていない
一見、再生医療という名称で、いかにも美容医療が進歩したように思えますが、実際のところ美容外科分野においては、このPRP治療は正しい施術手技が確立されていないがゆえに、広告で宣伝されているような効果が伴っていないのが実情です。
物理的に形態を変えていくのが美容外科の治療
アンチエイジング治療は、実際に年齢が若返るものではない
まず美容外科というのは、外科という名称がつく通り、人体の解剖を理解したうえで外科的(注射も含む)に形態を変えていくという分野です。
アンチエイジングに関しては、シワにヒアルロン酸やボトックスを注射したり、タルミを切除することで、シワ、タルミを改善していくものであり、実際に年齢が若返るものではありません。
勿論2次的な作用として、「見た目が若返ることで気持ちから若返る」という効果はあります。つまり、物理的に形態をかえていくのが美容外科の治療になるのです。
【目の下のタルミ除去(ハムラ法)】
【ほうれい線のヒアルロン酸注入】
外見ではなく細胞を若返らせる事ができる?
再生医療に関しては、遠い未来では進化を遂げ、実際に細胞を若返らせることが出来るようになるかもしれませんが、近い未来の話ではありません。
本当に細胞を若返らせることが出来れば、不老不死の時代もやってくるかもしれませんね。
このPRPに似たような治療としては、ご存じの方も多いかと思いますが、数年前に流行した「金の糸」があります。
コラーゲン増生でシワ・タルミが消失する事はない
金の糸を皮下に埋め込むことで、皮下で異物反応を誘発し、コラーゲンを造成させて若返らせるという機序です。しかし、実際には殆ど効果はありませんでした。
コラーゲンを皮下で増生させたところで、シワ、タルミが消失するわけがないのです。
実際にコラーゲンのサプリを飲んで、どの程度効果があるのかと考えると、想像がつきやすいかと思います。
「金の糸とPRPの違い」「PRPのメリット」について
金の糸とPRPの違い
【金の糸は、異物反応によりコラーゲンを造成させ若返らせるというのものです。】【PRPは多血血小板の中に含まれる栄養素が細胞を若返らせるというものです。】
共に、物理的に変化を施す外科的な治療ではなく、内科的に若返らせるというものなのです。先ほども申したように、美容外科は物理的に形態をかえて見た目を若返らせるから高い効果を実現できるものです。
一見聞こえの良いPRPや金の糸は内科的に若返らせるという内容です。
その為、患者様が十分に満足できる効果を得られず、結果としてトラブルに繋がりかねない、という事がご理解いただけるかと思います。
このように、美容外科には集客目的で「聞こえは良いが効果が検証や実証されていない治療」が、広告やメディアで沢山紹介されているので注意が必要です。
PRPのメリット
PRPの最大のメリットは、自分の血液、つまり自分の組織を利用するという安心感です。
ヒアルロン酸やボトックスは安全と称されていますが、人工的なものである事には変わりありません。しかし、ヒアルロン酸やボトックスは従来からある治療で、ほぼ治療法は確立しており、確実な効果があります。
勿論、注入方法などの知識や技術も要しますので、病院選びは大切です。
PRPに関しては、これらに相当する仕上がりには繋がるとは限りません。満足する効果が得られないだけならまだしも、手術手技が確立されていないため、失敗に繋がるケースも少なくはないのです。
実際に起きた再生医療トラブル
PRPにFGF(繊維芽細胞増殖因子)という物質を混ぜて注射!?
一部のクリニックでは、PRPでは効果が出ないという事から、このPRPにFGFという物質を混ぜて注射を行っているクリニックもあります。
その為、一部の大手クリニックでは、この再生医療に力を入れており、このFGFによって多数のトラブル例を続出しております。
当院に寄せられたメール相談を例に挙げます
初めてご連絡させていただきます。
1年前に、他院にて目の下・法令線・口角横にFGF注射を受けました。
注射後2か月ほどから、膨らみすぎ、ぽっこりとしてしまい、現在に至っております。特に、目の下は左右非対称となっており、左側は笑うとおかしな膨らみができてしまい大変悩んでいる状況です。
施術を受けた医院にも受診しましたが、正直まともに聞いていただけず、修正対応していただけない結果でした。カルテのコピーはいただくことができました。
同じような症状の方が多くいるようで、ネットの情報ですが、現在は確実な修正方法はなく、BNLS、ケナコルト注射、切開等の対応が主ということは認識しております。
貴院は目の周りの施術にも大変お力を入れているとお見受けいたしましたので、ご相談させていただきました。
このようなご相談お受けいただけますようでしたら、一度訪問させていただきたく存じます。
修正不可!?FGFの成分とは?
正直、このトラブル例に関する修正方法はありません。
以下にFGFというのがどのようなものなのか説明していきます。
従来から、皮膚科領域では、褥瘡や潰瘍の治療薬としてフィブラストスプレーと言われる薬剤があり、これらの疾患に著効します。
褥瘡や潰瘍とは皮膚の一部が欠損した状態で、このフィブラストスプレーを使用する事で、皮膚の上皮化に高い効果を発揮します。
(皮膚の治癒に高い効果が認められているスプレータイプのお薬)
このフィブラストスプレーをPRPに混ぜることで、高い効果を得ようとしているのです。
※褥瘡(じょくそう)とは・・・・・寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうこと。
一般的に「床ずれ」とも言われる。引用:日本褥瘡学会ホームページ
つまり、FGFとは、このフィブラストスプレーの事なのですね!!
メール相談にもあるように、FGFは不安定な増殖をすることで、膨らみすぎたり、しこりや肉芽腫を形成します。
その為、修正は困難です。勿論、メーカーもフィブラストスプレーの、このような使用法は推奨しておらず、クリニックが勝手に行っているにすぎません。何故、美容外科はこのような事を行うのでしょうか?
以下に私なりの見解を述べていきます。
結果も不安定・修正も困難な治療が何故広まるのか
1、クリニックに正しい治療法が浸透していない。
美容外科の手術手技は従来よりほぼ確立しております。
しかし、この確立された手術手技を習得するには、医師としても大変な事なのです。
まず、正しい手術手技が浸透している良い環境で、手技を学ばなければ、美容外科医としての正しい技術は身につきません。
現状の美容外科において、正しい手術手技を習得している医師は少なく、更にはクリニック内でそのような手術手技を学べる機関というのはほぼない、というのが現状です。
正直、金の糸、更には糸で鼻先を細くしたりする治療や、糸のリフトなどは、解剖学的な知識などは必要とせず、極端に言ってしまえば医師でなくても1回見れば簡単に出来るような手術なのです。
また、クリニック内に、このような正しい手術手技が浸透してない場合は、上記のような施術を宣伝して集客していくしか方法がないというのが現状かと思います。PRPに関しては、そもそも正しい治療法が確立されていないため、クリニックに技術を浸透させる事など出来るはずがありません。
最近では美容皮膚科が非常に増えております。正しい美容外科手技を習得するには、整った環境で何年もの修業が必要となりますが、美容皮膚科領域のレーザーや糸の治療であれば数ヶ月で身についてしまうものなのです。
こういった背景から美容皮膚科が乱立しているという状況が出来上がっております。
2、日本人自体が、簡単で手軽な治療を好む傾向にある。
最近ではメディアでも沢山の美容外科情報が流れるようになり、興味を持つ情勢が急増しています。いずれは韓国のような美容外科大国になるのではと言われておりますが、韓国人と違い日本人は大々的な整形というより、簡単で手軽なプチ整形を好む傾向があります。
プチ整形でも十分な効果を得ることが出来るのですが、その先を求めた時には外科的な治療が必要にならざるを得ません。
もっと高い効果を希望しているにも関わらず、手軽に簡単に出来るものはないのかと考えるのが人間の心理です。
こういった背景から、聞こえだけが良く効果の伴わない治療が宣伝され多くの方が、無駄な費用を使ってしまっているというのが、今の美容外科における問題点ではないかと考えております。
水の森美容クリニック公式HP アンチエイジング治療の詳細は こちら よりご覧ください。
「大手美容外科であるから安心」という安易な考えは大変危険です。
患者様も、しっかりと情報収集を行い、良いクリニックを見つけることが大切です。
当院HPでは、アンチエイジング治療について詳しくご説明しておりますので、是非とも御参考下さいませ。
医師による無料のカウンセリング
診察は全て医師が丁寧に行い、必要な治療法のみをご提案いたします。
美容医療が初めての方でも、まずはお気軽にご相談へお越しください。
2022.02.17
2024.11.22
監修医情報
医師
水の森美容クリニック 総院長 竹江 渉
経歴
平成10年 東京医科大学医学部卒業
平成18年2月 水の森美容クリニック開院
所属学会
麻酔科標榜医
BOTOX VISTA®認定医
ジュビダームビスタ®認定医
今回解説していくPRP治療とは、この再生医療の中の一つです。
では、このPRP治療とは、どのような治療なのでしょうか?
具体例を含め私、院長竹江が詳しくご説明いたします。