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上顎後方歯槽骨切り術

2024.7.12

本日は、先日の下顎枝矢状分割術(2024年4月7日施行)に
関連した内容の中から「上顎後方歯槽骨切り術」についてお話させていただきます。

上顎後方歯槽骨切り術は上顎臼歯部歯槽骨切り手術とも呼ばれ、
他の骨切り手術に比べますとあまり周知されておりませんが
顎変形症に於ける外科的矯正手術法の1つであります。
文字どおりではありますが上アゴの後方の歯槽骨に対して行われます。
従来より主に骨格性開咬症の治療に用いられてまいりました。

その他、矯正歯科治療をはじめとする歯科治療の前処置として行われることもあります。
また、メイン手術の複合・併用手術として行われることが多いようにも思われます。
このたびの手術に於いても下顎枝矢状分割術の複合・併用手術として片側(左側)のみへ行いました。

術前の模型シュミレーションを行うことにより、下顎枝矢状分割術後の
左下の歯列に対して左上の歯列はやや外側に位置することが予測されました。

そのため上顎後方歯槽骨切り術を用い、左上の歯列の内側への移動を計画しました。
再現性の確認のため、3セットの手術シュミレーション模型の作製を行います。

尚、この手術に於きましては、いくつかの注意すべき点が存在します。

① 術野の確保
② 口蓋動脈の走行
③ 歯根の位置・状態
④ 切開線の設計

まずは①についてです。
術野の明示が不足しますと、それに比例して手術はおのずと
困難なものになっていきます。
このことは、どのような手術にも言えることではありますが、
特にこの手術に関しましては術野の確保が難しく感じております故、
記させていただきました。

次に② ③についての把握が不足しておりますと動脈や歯根の損傷の原因となります。

最後に④についてですが、術後の治癒に欠かすことのできない血流の供給を
阻害しないものでなければなりません。

この手術の場合、歯肉の外側(頬側部)と内側(口蓋部)の両側へ切開を行う必要があります。
この両側への同時切開により血行不良を生じ治癒遅延や骨壊死などを招く可能性も
あります。
その回避目的で2段階法(手術を2回に分けて行う)がとられてきたという
先人の先生方の経緯もございます。
このことからも繊細な手術であることがお分かりいただけるかと思います。
そういった観点からも、この手術は比較的難易度の高い手術ではないかと考えております。

以上、今回は「上顎後方歯槽骨切り術」についてご説明させていただきました。